映画・ヴィクトリア(Victoria)

全編140分をワンカットという驚異的な撮影手法のサスペンス映画!

あらゆる観客に未知なるレベルのスリルと臨場感を体感させる、まさに新感覚のクライム・サスペンス!

 

 

ヴィクトリア(Victoria)のストーリー

目も眩むような地下のクラブの照明の中で、ひとりの若い女性が激しいダンスに身を委ねていた。家出少女のヴィクトリア(ライア・コスタ)だ。

彼女は3ヵ月前に母国であるスペイン・マドリードを飛び出して、一人で大都会ベルリンにやってきたのだった。

踊り疲れた彼女はやがてフロアを離れ、バーで一杯飲み、そして外に出る。

数時間後には仕事が始まるので帰宅しようとした彼女。そんな彼女に夜明け前の路上で地元の若者4人組が声をかける。

一見チンピラ風に見えたので警戒するヴィクトリアだが、少し話してみるとどうやら悪人ではないようだ。

ひとりで生まれ故郷のスペインを飛び出してきたヴィクトリアは、まだほとんどドイツ語を話せず、異国の都会ベルリンでで友人さえ作れずにいた。

そんなヴィクトリアの心の隙間を埋めるように、4人と楽しいひとときを過ごすことになった。

深夜スーパーで酒を盗み、青年たちの家の屋上で酒盛りが始まった。身の上話などをしながら、場所を変えて楽しい時間が流れていく。

気のいい4人だったが、しかし彼らはヴィクトリアが知らない危うい事情を抱えていたのだった。

裏社会の人物への借りを返すために、これからある危険な仕事を実行しなくてはならないのだった。

そこから事態は一気に急変してゆく。

運転手役の予定だった青年が酔いつぶれてしまい、何とヴィクトリアが代役を依頼される羽目になったのだ。

リーダー格のソンネ(フレデリック・ラウ)に淡い恋心を抱き始めていたヴィクトリアは、恐怖を感じつつもそれを受け入れる。

しかし彼女たちの行く手には、まさに人生が一変するほどの悪夢が待ち受けていたのだった。。

 

 

ヴィクトリア(Victoria)作品解説

映画冒頭のクラブから始まる140分におよぶ、まさに悪夢を見ているような展開を、全編ワンカットで描き切ったという驚異的な作品。

カメラは建物の内外を自在に行き来しつつ、青年たちの絶望的で破滅的な行動を途切れることなくリアルに捉えていく。

スタッフ&キャストがベルリンの街を駆けずり回って、完全リアルタイムの撮影を成し遂げた映像世界は、まさに「奇跡」と言葉以外に適当な言葉は存在しないだろう。

映画の常識である完成台本というものは存在せず、シーンとロケーション、人物たちの大まかな動きを記したわずか12ページの覚え書きが存在するだけだったという驚異の事実。

その簡単な覚え書きをベースにして、早朝のベルリン市街地でロケが敢行された。

俳優たちの即興や撮影中に起こった予想外のハプニングなども全てカメラに収めていったという。

全編にほぼ途切れることなく出演し続けたのは主演を務めたライア・コスタ。彼女は1985年生まれのスペインの新進気鋭の女優だ。

親しみやすいチャーミングなルックスに加えて、ヴィクトリアのまさに壮絶な運命をノンストップで体現した渾身のパフォーマンスは、それが演技であることすら忘れさせ、あらゆる観客の目を間違いなく釘付けにするだろう。

そのようなスケールの大きなワンカット撮影を実現させたゼバスティアン・シッパー監督は、俳優出身であり、監督作品は本作が4作目である。

ベルリン映画祭で撮影監督が最優秀芸術貢献賞を受賞したのをはじめ、ドイツ国内の映画賞6冠(作品賞、監督賞、主演女優賞、主演男優賞、撮影賞、作曲賞)という総なめ状態。

東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門での上映時にも大反響を呼んだことで知られる話題作である。

 

ヴィクトリア(Victoria)作品情報

タイトル    ヴィクトリア(原題:Victoria)
監督・製作   ゼバスチャン・シッパー
脚本     ゼバスチャン・シッパー、オリビア・ネールガード=ホルム、アイケ・フレデリーケ・シュルツ
撮影     ストゥルラ・ブラント・グロヴレン
音楽     ニルス・フラーム
出演     ライア・コスタ、フレデリック・ラウ、フランツ・ロゴフスキ、ブラック・イーイット、マックス・マウフ
製作年     2015年 (日本公開:2016年5月7日)
製作国     ドイツ
上映時間    140分

 

監督 ゼバスティアン・シッパー

生年月日: 1968年5月8日 (48歳)
出身地 : ドイツ ハノーファー

ミュンヘンのオットー・ファルケンベルク学校で演技を学ぶ。
その後、「Gigantic」という作品で監督デビューする(1999年)。この映画で、ドイツ映画賞の最優秀作品賞を受賞。
2009年に公開された「Sometime in August」という作品は、はゲーテの小説「親和力」を映画化したもの。
ヴィクトリア(Victoria)は、第65回ベルリン映画祭で上映され、2015年のドイツ映画賞で6部門受賞した。

 

ヴィクトリア(Victoria)を観た個人的な感想

何と壮大な実験的映画なんでしょうか。

140分という本当に長い全編に渡って、ワンカットで撮影したという撮影手法。
あまりにも見事に撮影されているので、本当にワンカットなのかとちょっと疑ったりしたんですが、実際に正真正銘のワンカット撮影で、超長回しで撮られているみたいですね。

しかし、普通の映画ではNGが何度も何度もあるわけなのに、ワンカットの撮影ということであればNGという概念がないわけだし、どうやってセリフを覚えるのか?というような疑問が湧いてきますよね。

ゼバスティアン・シッパー監督のインタビューなどを読んでみると、そのあたりの謎が解けてきました。

ゼバスティアン・シッパー監督は本作で脚本も担当しているわけなんですが、140分にも渡る長い作品にも関わらず、脚本は何と12ページしかないみたいなんです。

ということは、本作はアドリブ満載ということなんですね。

そのような事実を知った上で、主人公の家出少女であるヴィクトリアを演じたライア・コスタなどの演技を見ると、その凄味がヒシヒシと伝わってきますよね。アドリブであんな演技ができるのかと。

監督はインタビューの中で、「作品に自由な余白を残した」「撮影中に発生したハプニングも映画の一部であえるかのように仕向けた」というような事も話していました。

俳優陣にとっては、撮り直しがないという緊張感は相当なものだったでしょう。

その極度の緊張感の中で生み出された、無意識に見せる演技が、多くの観客をまさにその場にいるような臨場感に包み込んでいくことに成功したんだと思います。

それは、ドイツ映画祭で、主演女優賞&主演男優賞を受賞したということからも証明されています。

ほぼアドリブのような演技で、主演女優賞&主演男優賞を取ってしまえば、通常の映画はいったいこれからどうなってしまうんでしょうね。関係者には大きな衝撃が走ったでしょう。

とにかく色んな意味でこの映画は奇跡的な仕上がりになっているといえるでしょう。

映画に新しい可能性を開いたヴィクトリア(Victoria)を多くの人に楽しんでもらいたいものです。